乳信仰探訪

葉を煎じて飲むとよいという情報が『大日本老樹名木誌』にあるサクラ
国指定天然記念物に指定されている古木で、根元が巨大なことがわかる

金沢市の寺町寺院群にある松月寺敷地内の古木で、樹種はヤマザクラ。『大日本老樹名木誌』に「葉ヲ煎ジテ飲メバ乳ノ出ヲ良クスルトテ求ムモノ多ク、住僧ハソノ落チ葉ヲ悉ク集メテ所望ノ人ニ施與スト言フ」と記載されている。落ち葉を集めて乳の祈願のために訪れる大勢の人に分け与えたそうだ。この資料以外に乳の祈願の情報は見つけられず、また現在その情報は現地関係者には伝わっていないそうである(2024年4月訪問)。
サクラは国指定天然記念物で、『日本の天然記念物』(1995:講談社)によると、樹高15m、目通り幹周3.5mとある。1991年環境庁データベースでは目通り7.81mと大きな差があるが、測定部位によるのかもしれない。新しく伸びた枝が多くを占めていて、岩か土か見分けがつかなくなった幹のみが古い面影を宿している。花は径が4〜5cmと大きいのが特徴。徳川時代には、このサクラの樹下を通行する際には、敬意を表すために槍を倒して通ったそうである。
松月寺は斉藤刑部宗忠が白峰和尚のために越前国堀井庄に興した寺で、前田利家の加賀入国後、元和2年(1616)現在地に移った。サクラは元小松城内にあったものを、隠居して小松城に入った3代藩主前田利常が移植したといわれている。

本多静六:大日本老樹名木誌、大日本山林会、1913年、p280
写真:奥 起久子(2024/4/12)

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