日本助産師会出版

乳信仰探訪

妙林寺のイチョウ

1928年の古い資料にのみ乳の祈願の記載があるイチョウの古木
ここの文殊堂に祀られている文殊菩薩は大変古くからのものという
県道441 号線から長くて急な参道の石段を登って行ったところにある

田出ノ川地区は、四万十川(しまんとがわ)沿いの農村地帯。県道441 号線から参道の石段を登って行ったところに、文殊菩薩が祀られている文殊堂とイチョウの古木がある。乳が出るイチョウとして祈願されたと『四国老樹名木誌』に記載されている。『四国老樹名木誌』は古い資料で、現在ここを管理している岡村空真住職のお話では乳の祈願のことは現地には伝わっていないそうだ。イチョウの名称は別の資料『樹木図説』では「文殊の公孫樹」となっている。
『四国老樹名木誌』によると、イチョウは樹高25m、地上1mでの幹周5m、推定樹齢400年とある。最近の住職の計測では幹周8m、高温多湿な地域ということもあって、幹全体が苔にびっしり覆われており、周囲の山林に溶け込んでいる。ギンナンをたくさんつける雌木で、見たところ大きなチチはなさそうだ。
『四国老樹名木誌』には、イチョウは神亀年間(724〜729)の妙林寺創立時に植えられたと記載されているが、だとするとこの木は何代目かのものということになる。文殊菩薩も1300年前からお祀りされていると現地案内板にある。それ以外の沿革など詳細は不明。妙林寺の本堂の建物は昭和になってなくなっており、現在は文殊堂、金比羅堂と萬延2年(1861)の銘のある石灯籠といくつかの石仏が境内に残っているのみ。

高知営林局:四国老樹名木誌 上巻、1928、p86
上原敬二:樹木図説 第2巻、加島書店、1970、p175(乳祈願の情報なし)
写真:奥 起久子撮影(2023/9/9)

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樹木(イチョウ以外)その他現存せず奉納物(乳絵馬)奉納物(乳型)存在せず摩崖仏神社樹木(イチョウ)仏像寺院仏像(堂)岩石乳神など

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