日本助産師会出版

乳信仰探訪

安国寺 飴買い幽霊の墓

大きいのが母の、小さく寄り添っているのが赤ちゃんのお墓と伝わっている
一番はじにあり、安産や乳の出を祈願する参拝者が絶えなかったとのこと
安国寺は江戸時代初期に黒田長政が建てた寺院

江戸時代に初代藩主黒田長政が建てた寺院で、お墓の中で赤ちゃんを産んだ女性が乳の代わりにするため夜な夜な飴を買いにきたという飴買い幽霊の伝説が伝わる。境内に母と結局は亡くなってしまったという女児が祀られている。昭和の終わり頃まで8月にお祭りをしていたとのことで、安産や乳の出を祈願する参拝者が絶えないと『日本伝説大系』にある。
このような「飴買い幽霊」「子育て幽霊」の民話は全国に広く伝わっているが、乳の祈願が伝わっているのは、安国寺に加え京都府福知山市の永明寺(ようめいじ)と石川県輪島市の総持寺祖院の乳もらい地蔵の3ヶ所のみのようである。永明寺も総持寺祖院も赤ちゃんは男児で、お寺に引き取られて立派に成長し高僧になっているところがここと異なる。
寺の記録によるとこの話は延宝7年(1679)のことで、境内にある母のお墓には「岩松院殿禅室妙悦」延寶七年と彫られており、寄り添っている小さい方が「夢参童女」と掘られた女児の墓と伝えられている。
安国寺は山号を大湖山という曹洞宗の寺院。慶長5年(1600)に豊前から筑前に移った黒田長政が、天翁全補禅師のために豊前から安国寺を移したという。

宮地武彦、山中耕作:日本伝説大系 13巻北九州編、みずうみ書房、1987、p223
福岡県広報室編:郷土のものがたり 福岡県の民話と伝説 その2』、福岡県総務部県政情報課、1989(2刷)、p56〜57
写真:齊藤政光氏提供(福岡市在住) (2009/4/30、2009/7/23撮影)

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樹木(イチョウ以外)その他現存せず奉納物(乳絵馬)奉納物(乳型)存在せず摩崖仏神社樹木(イチョウ)仏像寺院仏像(堂)岩石乳神など

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