日本助産師会出版

乳信仰探訪

兵戸山(酒呑童子山)のちち石

このような丸い巨岩がゴロンと山道の傍にあれば目立ったことだろう
反対側から見ると丸くはないが・・・
石の前を通る谷沿いの道は今は全く使用されていないため、アクセス困難となっている

上津江フィッシングパークの先のスーパー林道を5~6kmほど上って行った国有林内にある丸い巨石。
「乳石」と呼ばれ、願をかけると乳が得られるという話が『大分県郷土伝説及び民謡』に、乳を授かった人たちはお賽銭をあげ、甘酒を供えてお礼参りをしたこと、上津江だけでなく熊本県菊池からも多くの人がお参りに来て数十年くらい前までは石の周囲には多くの奉納物があった、という話が『上津江村誌』にある。
笹野地区にお住まいの女性(80歳)のお話では、この石に乳の祈願が行われたていたことは知っている、石の前を道が通っており、お賽銭が置かれていたとのこと。
兵戸山は酒呑童子山とも呼ばれ、京都の大江山と同じ鬼退治伝説が残る山。大分と熊本の県境にあって、山を越えると熊本県菊池市となる。今は全く跡形もないが、昔は太平山兜率寺(そとつじ)という寺院が石の500mほど下にあったという。林道ができる前には、石の前を通る川原川の沢沿いの道が交通路で、石の上方には炭焼き窯跡が複数残っている。現在の林道から行くと、岩清水という湧水から更に1kmほど上に行ったところにある堰堤付近から沢に降りたあたりになるが、現在部分的に踏み跡らしいものはあるものの全く使われていない道なので、案内なくこの場所に行くことは難しいだろう。

大分県教育会:大分県郷土伝説及び民謡、大分県教育会、1931、p248〜249
上津江村教育委員会:上津江村誌、上津江村、1992、p505

写真:奥 起久子撮影(2023/11/7)

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樹木(イチョウ以外)その他現存せず奉納物(乳絵馬)奉納物(乳型)存在せず摩崖仏神社樹木(イチョウ)仏像寺院仏像(堂)岩石乳神など

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