山間部の荒山集落の中心にある三間四方の大きさのお堂である。婦人の病、特に乳の少ない人に霊験あらたかで、お参りすると必ず乳が出るようになること、乳が出るようになると布を糸で母親の年の数だけむすんで乳房を作って奉納したり、木で乳房の型を刻んでお礼に奉納したりしたという情報とその写真が、『天瀬町赤岩 玖珠町北山田の民俗』『九州・沖縄の民間療法』に載っている。
またこのお地蔵さまは子ども好きで、境内で子どもが遊んでも怪我をしないと言われ、また火伏せのご利益もあって荒山が火事の時は風向きを変えたという言い伝えがあるそうだ。
報告書に草葺とあるお堂は、昭和58年(1983)に改築されている。堂内には奉納された赤い腹掛けが残っていたが、乳型は残っていなかった。近くに住む女性の話によると、乳の祈願があったかどうかについてはわからないが、乳の祈願で知られる高塚地蔵とここの地蔵は姉妹と聞いているとのことである(2023年8月取材)
天瀬町:天瀬町史 明日への礎 改訂版、天瀬町、2005、p592
大分県教育委員会:『天瀬町赤岩 玖珠町北山田の民俗』大分県文化財調査報告第22・23輯―玖珠川ダム水没畜民俗資料緊急調査-、1971、p77
佐々木哲哉:九州・沖縄の民間療法、明玄書房、1976年、p152 https://dl.ndl.go.jp/pid/12169790/1/80
写真:奥 起久子撮影(2023/8/20)、
資料提供:児島恭子氏(前札幌学院大)、飯田 崇氏(日田市在住)、日田市役所文化財保護課