ダムで水没した五ケ山の道十里集落に、薬師如来が祀られている薬師堂と、その境内に大イチョウがあった。樹高37.5m、目通り幹周6.0m、推定樹齢数百年、チチが30あまり垂れていて、天然記念物指定であった。
書籍『日本老樹名木天然記念樹』には、雌株で樹形美しく、大枝には大小のチチがあり、大きいもので11本、最大は2.5mに達し、樹下に祀られている薬師如来に参詣すれば乳が出るというので参詣者が多いとある。那珂川町教育委員会発行の『郷土史』には、「垂乳根の銀杏」と呼ばれ、乳が出るようイチョウと薬師堂にお参りしていたことが記載されている。
南畑ダムができたのは昭和40年（1965）で、イチョウは水没して枯れてしまった。薬師堂と薬師如来は移設され、那珂川八十八ヶ所霊場第40番札所となっている。
側に道十里水没記念碑がある。現在南畑ダムの水位は高くないため、枯れたイチョウは全体が水面上に出ているようである。

帝国森林会：日本老樹名木天然記念樹、大日本山林会、1962、p326
那珂川町教育委員会：郷土史　那珂川、那珂川町発行、1976、p61〜63
那珂川観光協会：郷土なかがわ写真集第一巻、1984
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写真：郷土なかがわ写真集、齊藤政光氏（ブログ「お寺めぐりの友」管理人）提供