日本助産師会出版

乳信仰探訪

神社も周囲も覆い尽くさんばかりに枝を広げたイチョウ
周囲は原生林のように樹木が生い茂ってイチョウの幹もチチもよく見えないくらいである
多くの石塔や石灯籠が立ち並んでいる

今宮神社の境内にあり、今宮神社の大イチョウとも言われる。『植物研究雑誌』に乳神と言われてチチの皮が催乳剤として使われたこと、『鷹島町郷土誌』や松浦市教育委員会作成のパンフレットに、昔から皮を煎じて飲むと乳が出るという伝承があり、他の郷からも女性が参拝にくるとの記載がある。
イチョウは樹高24m、目通り幹周 8.1m、樹齢450年と言われ、県指定天然記念物。地上すれすれのところから3本の幹に分れ、そのうち最大のものは目通り幹周が4mほどある。この主幹の高さ4mばかりのところから出ている側枝に、数本のチチが垂れさがっている。
チチの最大のものは長さ2.8m、その基部の周囲は1.8mあって、チチの大きさとしては日本有数のものとある。チチの発達は雌株より雄株が良いことが多いが、これは雌株なのでその点では珍しいかもしれない。
鷹島は元寇との最後の戦いがあった場所。以前は離れ島で交通手段はフェリーだったが、2009年に鷹島肥前大橋が開通して陸続きとなった。
今宮神社は、久安4年(1148)にこの地を治めていた松浦 直(なおし)が、父である久(ひさし)のために満福寺境内に建てたと言われる。境内には、元寇と戦った松浦 答(こたう)の墓や多くの五輪塔、宝篋印塔がある。満福寺は明治の廃仏毀釈で廃寺となって、現在無人の今宮神社だけが残っている。

藤野正義:巨大な柱瘤(俗に乳房)を有するイチョウ、植物研究雑誌、30(10):320、1955
鷹島町郷土誌編纂委員会:鷹島町郷土誌、鷹島町、1975、p160
松浦市教育委員会:パンフレット「鷹島ー蒙古襲来・そして神風の島ー」、2010、P8
樋口豊宏:イチョウ、1991、p51
まつうら観光物産協会サイトhttps://matsuura-guide.com/manabu-shiru/manabu-shiru-takashima/今宮神社・広久山満福寺/
写真:奥 起久子撮影(2022/7/25)
資料提供;松浦市教育委員会

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樹木(イチョウ以外)その他現存せず奉納物(乳絵馬)奉納物(乳型)存在せず摩崖仏神社樹木(イチョウ)仏像寺院仏像(堂)岩石乳神など

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