魚津市の市街地、富山鉄道の高架のすぐ脇に、高野山真言宗 愛宕山実相院という寺院があった。廃仏毀釈の影響で、明治3年(1870)芦峅寺のウバ堂に安置されていた69体の姥尊のうち66体がこの実相院に移ってきたという(福江論文)。
『魚津区域郷土史』によると、実相院に移った姥尊には乳の御利益がある(「米一合を供奉して乳を給らんことを祈り霊験著し」)、『魚津市史』では安産のご利益があると祈願されたと記載されている。この姥尊は次第に民間に売却されたりしてなくなってしまい、実相院も2005年頃までは庫裡があったらしいが、現在は墓地のみとなってしまった。
芦峅寺の姥尊は最近になって少しずつ里帰りし、立山博物館と芦峅寺閻魔堂(富山県中新川郡立山町芦峅寺)に収められている。現在閻魔堂には23体の姥尊があるが、2023年時点で確実に以前芦峅寺ウバ堂にあったと判定できるのは、もともと残っていた3体+里帰りのうち4体の計7体とのこと(福江論文)。
『伝説とやま』では芦峅寺にあったオンバサマには、子授け、安産、乳授けのご利益があると述べ、理由として姥堂の祭(布橋灌頂)に多くの女性が参加したことを挙げている。しかし細木論文では、かつての芦峅寺時代の姥像に安産や乳の祈願は確認できないと述べており、本稿では福井市乗久寺の「跰倉媼婆尊像」*の場合と同じく、乳のご利益は芦峅寺から移された先で発生した、という前提で記載している。*https://www.midwifepc.co.jp/column/2026/05/07/joukyuji/
魚津市史編纂委員会:魚津市史上巻、魚津市役所、1968年、p235、236 https://dl.ndl.go.jp/pid/3018852/1/131
北日本放送:伝説とやま、北日本放送、1971年、p100 https://dl.ndl.go.jp/pid/12467733/1/55
林 章:魚津区域郷土史 魚津区域郷土読物 復刻版、新興出版社、1983年、p121 https://dl.ndl.go.jp/pid/9539045/1/137
細木ひとみ:江戸時代の芦峅寺・媼尊信仰の一考察 ―安産・子育て信仰を言わない理由― 、富山県[立山博物館]研究紀要、25:71〜85、2019 https://tatehaku.jp/wp-content/themes/tatehaku/common/images/pdf/bulletin/2018/25_2018_04.pdf
福江 充:立山山麓芦峅寺におけるウバ尊信仰の研究―新たに発見した尊像の紹介も含めて―、北陸大学紀要、55:173~ 216、2023
https://www.hokuriku-u.ac.jp/library/libraryDATA/kiyo55/commu01.pdf
写真:奥 起久子撮影(2026/5/17)



