乳信仰探訪

お岩の井戸と斎殿清水

地元の人には、坂の下にある「百坂下のお清水(しょうず)」に乳の祈願があったと伝わっている
お堂の中には、清水観音が祀られて綺麗に管理されている

福井市足羽に乳の祈願が伝わる湧き水があり、色々な伝承がある。
『福井県の伝説』にある「お岩の井戸」の話では、孝顕寺のそばに住むお岩さんというお婆さんが孫を育てるために、夢のお告げの通りに地面を掘って湧き出た水に白米を投げ入れたところ乳に変わって孫を育てることができたという。
『越前若狭の伝説』では、お岩さんは乳母で、乳が出なくなったことを苦にして井戸に身を投げたという。乳が欲しい女性は歳の数だけの豆、もしくは1文銭を3つ井戸に投げ入れると願いが叶うという話のほかに、お岩さんは母親で、乳の出ない女性を救うために池に身を投げたもので、その後この池に乳もらい祈願の女性が来たという話がある。
最初の資料では水道工事の時に蓋をして外から見えなくなった、後の資料では昭和7年(1932)の道路拡張工事で埋め立てられたとあり、場所は特定できない。
一方『福井県の伝説』に、「お岩の井戸」と別の湧き水で、結城家の殿様が愛用したと言われるほか、目の悪い人や体の悪い人に効くと言われて多くの人が水をもらいにくる「百坂下のお清水(しょうず)」が近くにあるという記載がある。
現地を訪れて複数の人に乳の祈願の井戸のことを聞くと、「百坂下のお清水」がそれとのこと。この清水は現地案内板には「百坂・斎殿清水(ゆのやしょうず)」と書かれている。案内板によると、清水は大正13年(1924)に足羽水ポンプ場(現在の福井市水道記念館)建設に伴って埋め立てられ、清水観音が建てられたとある。百坂の下の水道記念館の側に、観音を収めた祠と百坂・斎殿清水跡という案内板が立っている。こちらの斎殿清水の方は乳の祈願について書かれた資料はなく、地元に伝わる伝承のようである(2025年4月訪問)。

河合千秋:福井縣の伝説、福井県鯖江女子師範学校郷土研究部、1936年、p22〜23 https://dl.ndl.go.jp/pid/1231677/1/2
杉原丈夫:越前若狭の伝説、松見文庫、1970年、p15 https://dl.ndl.go.jp/pid/12467707/1/22
東安易公民館サイト http://www1.fctv.ne.jp/~hiago-k/siseki%20meisyo/hasiminami.html
写真:内岡 恵撮影(2023/6/27)

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