日本助産師会出版

乳信仰探訪

西光寺

大分市郊外の山の麓にある西光寺
乳のご利益があると伝わる阿弥陀如来は秘仏で、奥の逗子の中である
阿弥陀如来を納めて西光寺を建立したという伝承のある虎御前の墓

西光寺に祀られている阿弥陀如来は、お願いすると乳の出がよくなるという言い伝えがあったという情報が当時の住職曽我禅登さんの話として、地元の資料『城南・南大分のむかし話』『稙田(わさだ)のむかしばなし』にある。現在のご住職(71歳)もご存知であった。
虎御前*がこの阿弥陀如来の木像を納めて西光寺を建立したという伝承があり、火事で寺が全焼した際も焼け残ったのだそうだ。阿弥陀如来は子供の背丈ほどの高さで逗子の中に納められており、昭和37年(1962)のご開帳を最後に秘仏となっており、拝観できないそうだ。
昔は近くに小歌の池というやはり虎御前が曾我祐成を懐かしんで歌を詠んだところ湧き出たという湧水があったそうだが、その後水が枯れ、寺院も移転しており現在は跡もないという。
西光寺は山号を来迎山という臨済宗妙心寺派の寺院。室町時代中期に大友親隆が焼け残った阿弥陀如来像を祀って再建したという。虎御前はここに庵を結んだのちこの地で没したと伝えられており、寺院の敷地内にお墓がある。五百羅漢があることでも知られる。
大分市内にはもう1カ所下郡1497番地にも西光寺があるが、こちらは黄檗宗で別の寺院。

*静岡県大磯の遊女出身で,鎌倉時代初期の曽我兄弟の仇討ちで知られる曾我十郎祐成(すけなり)の愛人。祐成の死後尼になって祐成の供養のため善光寺をはじめとして全国を回ったといわれ、多くの場所に足跡があるが、実在した人物かどうかは不明。

郷土史蹟傳説研究会編:増補 豊後傳説集、1932、p57
城南小学校PTA:おかあさんのとっておきの話 城南・南大分のむかし話、1980、p108
牧野桂一:稙田のむかしばなし、稙田郷土史研究会、1983、p86-88
写真:奥 起久子撮影(2023/11/6) 

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