日本助産師会出版

乳信仰探訪

木喰上人作子安観音像 

木喰上人が「安産、健やかな成長、豊母乳」を祈願して彫刻したと伝えられる子安観音
坂梨地区にある天神社の境内の小堂に祀られている
小さな竹筒に甘酒を入れて祈願したと記載されている

阿蘇市街地の東の外れ、坂梨地区の路地の奥に天神社があり、境内の小堂に木喰上人(もくじきしょうにん)の子安観音像が安置されている。高さ163cm、胴廻り150cm、木喰独特の型破りで個性豊かな老婆のような観音さまが赤ちゃんを抱いている。ケヤキに彫られていて市指定文化財である。
木喰上人は寛政4年(1792)にここ坂梨宿を訪れ、子宝に恵まれなかった土地の富豪である虎屋の依頼により、「安産、健やかな成長、豊母乳」を祈願して子安観音を彫刻したという。子どもの病気治癒や母乳の出がよくなるよう祈願する人々の信仰を集め、現在も地域の人々の手によって大切に守り伝えられていると阿蘇市教育委員会の立てた現地案内板にある。
また以前の一の宮町名の現地案内板や書籍『豊後街道を行く』には、小さな竹筒に甘酒を入れて祈願したとある。小堂の前の小さな石造物に彫られている年号は、文久2年(1862)である。
坂梨は豊後街道と野尻(高千穂、日向方面)へと通じる日向(野尻)往還の交わる宿場町で、古くから通りには常夜灯が並び民家の他に、旅籠、酒造業など50軒以上の店が軒を連ねていたという。
木喰上人は甲斐の国(山梨県)の出身で、木喰戒(もくじきかい)という苦行を続けた僧で多くの仏像を彫ったことでも知られる。安永8年(1779)に北海道に渡って最初に彫った江差町金剛寺の子安地蔵にも乳の祈願が伝わる。ここで彫ったものが最初の子安観音であるが、九州で木喰上人が作った像は坂梨の一体のみと資料にある。木喰仏のうち乳信仰が伝えられているのは、この最初の子安地蔵と子安観音の2体だけである。

松尾卓次:豊後街道を行く、弦書房、2006、p71〜72
サイト「阿蘇ペディア」 http://www.aso-dm.net/?木喰上人作子安観音像
サイト「豊後街道の宿場町 坂梨宿」 http://sakanashi.ddo.jp/frame2.htm
写真:内岡 恵撮影(2008/05/13)
情報提供:阿蘇市教育委員会

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