日本助産師会出版

乳信仰探訪

中窪田神社の神石

大津町郊外にある古くからの、落ち着いた雰囲気の神社
参道の石段に盃状穴ではないかと思われる凹みが多数見られる
湧水が多い地域で、境内にもきれいな水が流れている

大津町郊外にある神社で、初生神社(うぶじんじゃ)とも言う。境内に神石という石があり、昔はこの石を撫でて乳の祈願をしたと、大津町公式サイトにある。昔は10kmほど離れた集落である瀬田や原水などからも、乳のためのお参りに来ていたという(『大津町誌』)。
この神社のご利益は、降雨、乳授け、痘瘡予防の3つで、乳授けについては、甲斐国初産大明神を勧請したことによるという(『菊池郡市神社誌』)。初生神社の呼称もこれによるものであろう。町公式サイトに、この神石はご神体として祀られて非公開とある。
興味深いことは、参道の石段に、祈願のために時間をかけて穴を穿ったという盃状穴*ではないかと思われる凹みが多数見られることである。
またこのあたりは矢護川の源流域で湧水池が多く、境内にも湧水があってきれいな水が流れている。そのため古くから地域住民の憩いの場として親しまれ、「お乳の出が良くなるように」とお参りをする女性参拝者で賑わっていたという話が、熊本県環境生活部環境局の湧水のサイトにある。
中窪田神社の起源は古く、平安後期の久安4年(1148)に阿蘇神社から神霊を勧請したと言われている。

*盃状穴:手水鉢が知られており、広島市大歳神社と堺市長承寺の乳薬師にあるが、狭山市青柳釈迦堂の石灯籠基石にもある。転用かもしれないが、石段に穿っているものは初めて見る。

大津町史編纂委員会編纂室:大津町誌、大津町、1988、p1106
菊池郡市神社誌編纂委員会:菊池郡市神社誌、熊本県神社庁菊池支部、1967、p369〜370
環境立県くまもと公式サイト「水の国くまもとー初生神社」https://www.kankyo-kumamoto.jp/mizukuni/kiji003240/index.html
大津町公式サイト「大津町観光」https://www.town.ozu.kumamoto.jp/kankou/kiji0036601/index.html
写真:奥 起久子撮影(2022/05/03)
資料提供:大津町役場

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