日本助産師会出版

乳信仰探訪

瀬目八坂神社のイチョウ

瀬目八坂神社の石段のそばに立つイチョウ
横に伸びた枝から立派なチチが垂れている

瀬目(せめ)八坂神社の石段のそばに立つイチョウで、樹高25m、目通り幹周5.0m、推定樹齢300〜400年で村指定天然記念物。雌木で多くのギンナンをつけるが、横に伸びた枝から立派なチチが垂れている。
ちちこぶと呼ばれ、産後に祈願すると乳の出がよくなるとのことで「乳もらいの神さん」と言われて信仰されたと、五木村教育委員会の現地案内板と資料『五木の民俗』に記載されている。
瀬目八坂神社は人吉市市街から五木に向かって国道445号線を23kmほど北上、途中で右折して山道を延々と登ったところにある戸数10軒ほどの瀬目集落の外れにある。
古い棟札2枚が村指定文化財になっていて、そこに嘉慶2年(1388)に勧請と記載されているという。非常に古い様式の「出組(でぐみ)*」が残されており、由来の古さを物語る。農耕神で安産や農作物の虫除けのご利益があり、また水神との関りがあって、はるか下にある川辺川のそばの祇園池から、毎年亀が山を登ってこの神社に来るという伝承がある。堂内に三十六歌仙の絵馬が奉納されているが、残念ながら風化してほとんど読めなくなっている。

*出組:日本独特の寺院の建築様式で、釘を使用せず木材同士を組み合わせて柱と梁とを固定する組手の一種。

五木村民俗調査団:五木の民俗、五木村、1993、p462
五木村公式サイト:https://www.vill.itsuki.lg.jp/q/aview/5/3092.html
写真:奥 起久子撮影(2020/09/20)
資料提供:五木村教育委員会

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樹木(イチョウ以外)その他現存せず奉納物(乳絵馬)奉納物(乳型)存在せず摩崖仏神社樹木(イチョウ)仏像寺院仏像(堂)岩石乳神など

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