乳信仰探訪

大悲山の乳岩

『拾彙都名所図会』にある乳岩と訪れた男性の図(国際日本文化研究センターサイトより)
同じ資料にある説明文(国際日本文化研究センターサイトより)

江戸時代の資料に図と説明文が掲載されて、乳の祈願の場所として名前は知られているにもかかわらず、現存が確認されない場所。
天明7年(1787)に発行された『拾彙都名所図会』に、テーブルのような変わった形の乳岩(ちいわ)と、乳の形をした鍾乳石がぶら下がっていて、そこから滴る水を覗き込んだり、柄杓で汲んだりしている男性が描かれている。効能として、乳水を飲むと乳が出るだけでなく、五臓や目などにも効能があること、老化を防ぎ子授けの効果もあること、鍾乳の粉を煎じて用いたり、ご飯に炊き込んだりして用いると必ず験(しるし)があるとある(『京都名所むかし案内』)。
この場所は、京都市内から40kmほど離れた深山幽谷の地と書かれている。近くにある大悲山峰定寺(ぶじょうじ)は修験の場所で、公開はされているが懸崖づくりの本堂は撮影禁止である。
乳岩はこの門前から寺谷川に沿って東に800mほどだったとのこと。さらに対岸の奥にある3本スギは「花背の三本スギ」として「京都の自然200選」や林野庁「森の巨人たち100選」に選定され、訪問記や写真がネットでいくつもみられるにもかかわらず、乳岩については子どものときに行ったという人がいる以上の情報がない。
峰定寺関係者からの情報では、心ない人たちによって破壊されてしまい、ルートも現在は失われているとのことである(2025年8月)。

本渡 章:京都名所むかし案内 絵とき「都名所図会」、創元社、2008年、p233〜237
ブログ「滋賀を歩こう」https://kida.shiga-saku.net/e1536507.html
京都風光サイト https://kyotofukoh.jp/report421.html
サイト京都紅葉 https://www.ne.jp/asahi/kiwameru/kyo/aki.htm
国際日本文化研究センターサイト
https://www.nichibun.ac.jp/meisyozue/kyotosyui/page7/km_01_511.html
写真:国際日本文化研究センター提供

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