乳信仰探訪

「みどり子をわきて 恵のいちしるき 乳房の求め かなわぬはなし」と書かれた奉納額
小野篁作と伝えられる「乳房地蔵尊」(福田寺提供)
下京区住宅街の真ん中にある福田寺

下京区の住宅街の真ん中にある福田寺、乳の出をよくする以外に乳の病気もなおすといわれる「乳房地蔵尊」が祀られている。小野篁(おののたかむら)作といわれる端正な顔の立派な地蔵尊であるが、幕末に一時行方不明となってしまう。明治初期に篤志家が見つけてきて奉納、ご本尊阿弥陀如来の左わきに置かれている。
篤志家は高島屋創業者である飯田新七で、本堂正面には、彼が奉納した「みどり子をわきて 恵のいちしるき 乳房の求め かなわぬはなし」と書かれた額が奉納されている。この歌は歌人としても知られる霊元天皇(1654~1732)作のご詠歌で、これを記載した御朱印が授与されている。
住職からの情報では、乳の出を希望する母親はお線香の灰を乳房に塗りつけて祈願していたとのことである(2021年7月訪問)。
福田寺は山号を東岡山(とうこうさん)という時宗の寺院で、文永元年(1264)鎌倉幕府6代将軍である一品宗尊(いっぽんむねたか)親王により建立され、寛文年間(1661〜73)に「乳房地蔵尊」が祀られる道場として、洛陽四十八所地蔵霊場の一つとなったとある。江戸時代に作られた山門脇には「洛陽四十八ケ所第四十四番牛王身ちぶさ地蔵尊福田寺」と彫られた石標が立っている。

福田寺公式サイト https://kyoto-fukudenji.com/about/
写真:福田寺提供、奥 起久子撮影(2021/7/24)

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