聖徳太子の墓所があることで知られる太子地区の街角にある地蔵堂で、泥を塗って祈願すると願いが叶うという伝承があって地元の人々に信仰されてきたと『科長の里のむかしばなし』やブログに紹介されている。泥の池から掘り起こされたので泥がつくと嬉しいのだと伝承にあるそうだ*。
『お地蔵さまのご利益 あなたの願いをかなえてくれる民間信仰の原点』には、「地蔵堂の後ろにある三角池の鯉を持ち帰り、産後まもない母親に食べさせると母乳が出やすくなるといわれていた。お礼参りには必ずすくった数だけの鯉を池に放した」という話がある。
近くに住む高齢者の話によると、子どもの頃は池に水が流れ込んでおり魚もいたが、住宅が立て込んできた10年か20年ほど前に水が流れ込まなくなり池はなくなって跡が残るだけになったとのこと。複数の高齢の人に聞いてみたが、乳の祈願や鯉の話については伝わっていないようである(2025年4月訪問)。
*太子町立竹内街道歴史資料館:科長の里のむかしばなし、太子町立竹内街道歴史資料館、2003年、p72〜73(乳の話はない)
青山 央:お地蔵さまのご利益 あなたの願いをかなえてくれる民間信仰の原点、大陸書房、1983年、p184〜188
写真:奥 起久子(2025/4/20)