和泉市の山間部に父鬼と呼ばれる地域がある。ここを流れる父鬼川本流に乳滝という滝があり、川に沿った道路からも見えている。この道路は大阪府から和歌山県有田市に抜ける国道「父鬼街道」である。
乳滝は、むかしは父滝と呼ばれ、父鬼が住んでいたという。滝の上の岩に不動尊が祀られていて、祈願すると乳が出るという霊験があり、遠近から参詣するものが多い、という話が『日本の伝説』にある。祈願の際に鯉を滝の淵へと放すという言い伝えがあるという話がブログにあるが、元情報は不明。2023年1月に滝の近くに住む数名に取材したが、乳の祈願自体を知っている人に会えなかった。
岩の上に祀られていた不動尊は、昭和40年(1965)頃の道路工事の際に移されて、現在は滝の反対側の道路そばに「乳瀧不動尊」として祀られている。
庄野英二、中村浩:日本の伝説8大阪の伝説、角川書店、1976年、p70
ブログ「大阪妖怪・伝承探訪」 http://youkai.tou3.com/Entry/80/
写真:奥 起久子撮影(2023/1/29)