旧・山口村の和田地区の山ぎわの地に「乳神さま」と言われる祠がある。むかし酒好きの人がこの辺りで亡くなったが、その時「墓に酒を供えてくれたら、乳が出るようにしてやる」と言い残したと伝えられる。それ以来この祠に酒を供えて乳の出を祈願するようになったという話が『信州の民話伝説集成』にある。
「ふるさと椿街道」から民家のそばを通り抜けて山の方に入って行くと、墓地の奥に瓦葺の小さな屋根で覆われた石塚があり、その脇には木版に女性の姿が彫られたものが置かれている。近くの年配の女性からの情報によると、若い頃は搾った乳をお供えして乳の出を祈願したことがある、最近は見受けないが、とのこと(2026年6月訪問)。
乳神さまは、高さ1m越え、幅60cm位、厚さ20〜30cm位の1枚の自然石の立派な墓碑で、「壺仙禅定門位」と彫られ、脇に「俗名」が併記されている。酒好きだったという人の名前だろうか。年代は大○5年とある。地元の研究者からの情報では大正ではないかとのこと。大正とするには古び過ぎている感もあるが、大正以前に大のつく年号は大永まで遡り、大永5年というと戦国時代の1525年となってしまうので、それでは古くて大変な話になってしまうかも。
山口村は長野県南西部にあった木曽郡の村で、島崎藤村の出生地である馬籠宿で有名。平成17年(2005)に岐阜県中津川市に編入合併している。
はま みつを:信州の民話伝説集成 中信編、草舎出版、2006年、p433
広報中津川No.834 2024年5月p25
https://www.city.nakatsugawa.lg.jp/material/files/group/6/kouhou_202405_all.pdf
写真:奥 起久子撮影(2026/6/3)
情報提供:中津川市山口総合事務所、山内總太郎氏(坂下地区郷土文化財保存会)



