乳信仰探訪

御手足堂には無数の手足が奉納されているが、乳型も少しある
よく見られる2個のものだけでなく、1個のものが多いのが特徴
観音堂の隣にある御手足堂

三方石観世音(みかたいしかんぜおん)は手足の不自由をなくすというご利益で有名だが、手足のみならず首から下の悪い部分を治すというご利益もあるという。観音堂の隣にある御手足堂には木製の手足が無数に奉納されているが、中に木製*の乳房の形をしたものもある。
『三方石観世音の手足形等奉納品調査報告書』によると、全部で奉納された木片はおよそ68000点。その中で奉納年や奉納者名が記載されている3455点が県の文化財に指定されており、うち296点(8.6%)が立体乳型絵馬(231点)と乳型(65点)である。乳型絵馬と乳型に限ると、年代は文久2年(1862)から昭和8年(1933)まで。乳型絵馬は2個で1セットが一般的だが、ここでは1個のものが非常に多いのが特徴(1個vs 2個vs不明 = 109 vs117 vs5:筆者が資料よりカウント)。
病気を治す祈願ということなので、1個のもので高齢者が奉納したものは乳がん治癒祈願と思われるが、年齢が20代のものも結構あるし、願はらしとか大願成就と記載されているものもある。乳授け祈願も併せて行われたものと考えられる。
手足の祈願の起源については「片手観音」の伝承がある。弘法大師が諸国巡礼して若狭に来た時に、三方のこの地に泊まって一夜で花崗岩の大岩に聖観音を刻み、あと右手だけという所で夜が明けて立ち去ったので片手になったというもの。観音堂の御前立の後ろの扉の奥に大岩があり、そこに片手の聖観音菩薩が彫られている。
*木製の乳型は布製のものに比べて圧倒的に少なく、他では阿蘇市狩尾の産神社、岡山県真庭市の足王神社、滋賀県大津市和邇中の乳守地蔵堂、千葉県印西市宗甫の馬頭観音堂に見られるのみ。数は三方石観世音が最多である。

福井県教育委員会:三方石観世音の手足形等奉納品調査報告書、福井県教育委員会、2020年、p181〜197
サイト「福井県伝承浪漫」 https://kofukuroman.com/mikatakataisikannzeonn/
写真:奥 起久子撮影(2024/9/9)
資料提供:澤 香苗氏(三方石観世音)

カテゴリー

内容

県名検索