京阪電鉄石山寺駅のすぐ上に、荒痛薬師という面白い名前の薬師堂がある。ご本尊の薬師如来に祈願すれば必ず母乳が出ると言われた、という話が『伝説の大津』『近江の伝説』『大津の伝説』『新修大津市史』にある。堂内には奉納された搾乳絵馬や女性の拝み絵馬が残されている(『近江の絵馬』)。秘仏で、33年に一度石山寺の観音のご開張に合わせて公開するという。
名前の由来として、『伝説の大津』『近江の伝説』『大津の伝説』に次のような話がある。正応3年(1290)に、近くの漁師が瀬田川で網にかかった石を引き上げて斧を研ごうとしたところ、石が「あら痛や」と言った。見ると薬師如来が彫られていたので、お堂を立ててお祀りしたという。別にきこりが山で見つけたという話もあると『新修大津市史』にある。
この薬師如来は大変霊験あらたかで、江戸時代には対岸にある瀬田の唐橋脇の竜宮社の竜神が女性に姿を変えてお参りにきたという話が上記の資料に記載され、その時龍が奉納するために持参した毛髪は寺宝とのこと。
大津市役所:伝説の大津、1937年、p158〜160
駒 俊郎、中川正文:近江の伝説 日本の伝説19、角川書店、1977年、p25
林家辰三郎他編:新修大津市史9 南部地域、大津市、1986年、p110〜111
大津市教育委員会博物館建設室:大津の伝説(ふるさと大津歴史文庫)、大津市、1987年、p112〜113
大津市歴史博物館:近江の絵馬、大津市歴史博物館、1991年、p38(写真)、p72(文章)
写真:奥 起久子撮影(2022/11/27)
資料提供:大津市教育委員会文化財保護課


