乳信仰探訪

新しいお花が供えられ、小さな石仏も1体ごとに可愛い前だれが掛けられていて、大切にされていることがわかる
観音堂境内のはじの方にあり、周りには多くの石造物がある

津里(つのさと)は琵琶湖の北の湖岸に面した集落で、美しい響きのする呼び名である。ここの観音堂にエノキの老樹があり、その下にお地蔵さまの坐像が彫られた自然石が置かれているが、これは乳の出に悩む母親を助ける乳地蔵であるという話が『近江の伝説(角川書店)』にある。
境内には乳地蔵という小さな看板のある2体の地蔵が並べられている。1体は上記の乳授け地蔵で、むかし村の豪族の若いお嫁さんが自宅の裏庭に祀られていた地蔵に祈願したところ乳がよく出るようになったので、みんなが祈願できるようにと若宮山の古墳の山頂に移した。その後お参りの便を考えて津里の観音堂へ移されたものとのこと。
もう1体は乳預け祈願の地蔵で、生まれたばかりの赤ちゃんを亡くした母親が供養に地蔵を彫ってもらい、乳が出て困るので乳をおさめてほしいと祈ったという話が『近江むかし話』『近江の伝説(第一法規出版)』にある。
乳授け祈願と乳預け祈願が並んでいるめずらしい場所である。

滋賀県老人クラブ連合会・滋賀県社会福祉協議会共編:近江むかし話、東京ろんち社、1968年、p223〜225
渡辺守順:近江の伝説、第一法規出版、1974年、p200〜201
駒 俊郎・中川正文:日本の伝説19 近江の伝説、角川書店、1977年、p115〜116
写真:内岡 恵撮影(2023/6/27)

カテゴリー

内容

県名検索