乳信仰探訪

日本有数の乳絵馬が保存されている
乳の祈願がされた薬師如来は国重要文化財
乳の祈願や乳預けについての詳細な説明が記載されている

高雄(たかお)寺は廃寺となって本堂の建物は平成11年(1999)になくなったのだが、多くの乳の祈願の情報を残している貴重な場所。現地を訪問すると、鐘楼、収蔵庫、(なんかの)お堂、案内板、観音堂跡と彫られた石碑、石造物、石垣が残っている。
『當麻町史』と當麻町観光協会の詳細な現地案内板に、「この薬師如来は、古くから授乳と難聴の人々に対して非常に霊験あらたかであるといわれ、近郷の乳の出ない人々又は耳の不自由な人々の参拝が多かった。その人々の願いが叶い、感謝の意をこめた絵馬が堂内に多く奉納されている。その絵馬も乳を授かった人は乳をしぼっている絵馬、耳が聞こえるようになった人は錐(きり)を板に何本もつけた絵馬、皮膚病の治った人はナマズの絵馬を奉納した」とある。
この現地案内板には「お堂の隅に小さなビンが吊り下げてあるが、これは一度乳を授かった人が自分の乳をそのビンに入れて奉納し、次の子どもができる時まで乳をあずけておいたものだといわれている」とあり、乳預け祈願があったということがわかる。
収蔵庫には仏像のほか、多くの乳絵馬が保存されており、100枚以上ある(著者が106枚までカウント)。大部分は搾乳の乳絵馬で、日本有数の数である。葛城市歴史博物館の担当者によると、地元の人の話ではお堂に乳の形をした奉納物(塗り物という)もあったとのことだが、残っておらずどのようなものか不明。
高雄寺のご本尊の阿弥陀如来、薬師堂の薬師如来と観音堂にあった聖観音ともども現在は収蔵庫内に祀られて、近くの明円寺(新在家158)が管理している。薬師如来と聖観音は重要文化財である。

当麻町史編集委員会編:當麻町史、当麻町教育委員会、1976年、p470〜471
サイト『源平史蹟の手引き』https://genpei.sakura.ne.jp/genpei-shiseki/takaodera/
写真:内岡 恵撮影(2024/7/12)
情報提供:葛城市歴史博物館

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