昔は招福寺といった。室生口大野駅で電車を降り、室生寺と反対側に山を登って行った場所である。薬師如来が本尊で、乳の仏さまとして信仰が篤いと『室生村史』に記載がある。
正福寺は廃寺となり、逗子に入った薬師如来と、おそらく日光・月光菩薩と思われる脇仏、その横には12神将が境内に残った薬師堂に保存されている。管理している檀家からの情報では、乳の祈願については伝わっていないそうだ(2024年1月取材)。
参道である石段とそばの寺院名を刻んだ石柱、薬師堂とその脇に多くの石造物が残されているが、本堂は取り壊されていて広場になっている。
この寺院にはまた木の本神社から伝わる室町時代から江戸時代にかけての能面6面が保存されていたが、こちらは県の文化財に指定され県立博物館で保管されている。
室生村史編集委員会:室生村史、室生村役場、1966年、p624 https://dl.ndl.go.jp/pid/3021014/1/327
写真:奥 起久子撮影(2024/1/16)