金勝寺のご本尊である薬師如来は、「乳薬師」または「子授け薬師」と呼ばれ、乳の出に霊験ありとして参拝されたという情報が『京阪神ご利益ガイド』にある。また眼病にも効験があったともある。金勝寺公式サイト*や現地案内板には乳の祈願の情報はない。
この薬師如来は周辺に生えていたという椣(しで)の霊木で行基が自ら彫ったという伝承があるそうだが、実際は平安後期の作**と考えられている。
金勝寺は山号を椣原山(しではらやま)という、現在は真言宗室生寺派の寺院。天平17年(746)行基の発願により創建された古刹で三十六坊を誇る大伽藍だったが、戦国時代に近くの信貴山城に居を構える松永久秀の焼き討ちで全焼、その後再建されたが規模が大変小さくなったという。竜田川に迫る薬師山の麗にあり、付近は峡谷である。
裏山には戦国時代末期の武将 島 左近の奥方である茶々が天正14年(1586)に造成したという磨崖石仏群があるので、この地の出身と伝えられる島 左近が焼き討ち後の再建に関与したものと考えられている。
*金勝寺公式サイト http://www.kinsyouji.or.jp
**平群町公式サイト https://www.town.heguri.nara.jp/soshiki/14/1069.html
神戸新聞出版センター:京阪神ご利益ガイド、神戸新聞出版センター、1985年、p227〜228
写真:奥 起久子撮影(2023/7/15)