乳信仰探訪

丘に寄りかかって小さなお堂・穴薬師がある
石龕の奥に石に彫られた3体の石仏が祀られている

スズランの里として知られる向淵の集落の外れの畑の脇に、丘に寄りかかって小さなお堂がある。石を積み重ねた石龕(せきがん)の奥に3体の石仏が祀られている。耳の悪い人や乳の出にご利益があり、堂内には麻の茎に竹のキリを挿したものや、手拭いが奉納され吊るされていたと『室生村史』にある。
石仏は八角形の大きな凝灰岩に3体が彫られていて、宇陀市教育委員会と向淵自治会連名の現地案内板によると、中央が錫杖・宝珠を持つ地蔵菩薩立像で130cmの高さ。両側はやや小さい地蔵菩薩立像で、右手は与願印左手は宝珠捧げる古い様式とのこと。鎌倉時代の中期である建長6年(1254)との銘があり、市指定文化財である。穴薬師と呼ばれているが、薬師如来ではなく地蔵尊像であること、また石棺仏であることが『室生村史』にある。
宇陀市教育委員会から現地の方々への聞きとり調査では、耳の病気については伝わっているが、乳の祈願については伝わっていないとのことである(2021年8月)。

室生村史編集委員会:室生村史、室生村、1966年、p763〜764
https://dl.ndl.go.jp/pid/3021014/1/396
写真:奥 起久子撮影(2023/7/15)
情報提供:宇陀市教育委員会

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