『大和馬見町史』に、乳の出には笛堂の寺のチホドキを飲むとよい、という地元の女性からの情報がある。この資料には寺院名の記載はないが、笛堂地区にある専明寺(せんみょうじ)では、「ちほどき」という名の乳の薬が家伝薬として伝わっており、届けを出して世界大戦後くらいまで製造販売していたということがわかった。
明治から大正にかけて作成されたと思われる販売方法や効能などを記した版木が残っており、乳をもまずして乳を出す妙薬で、第一の効能は乳のかたき・出すかし(乳が出ない、また出のよくないこと)、次に頭痛、のぼせ、肩こり、震え、後腹の痛み、産後の悩み全てで、産前産後に用いるとよい、と書かれている。
住職からの情報によると、30〜40年ほど前までは頒布希望の問い合わせがあったという。住職の祖母に当たる人が担当していたとのことだが、原料や製造方法については記録や伝承がなく不明とのこと(2024年7月取材)。
専明寺は山号を慈光山という浄土真宗興正派の寺院で、ご本尊は阿弥陀如来。寺院のサイトには薬や乳の祈願に関する情報はない(https://www.senmyouji.com/sitemap/)。
池田末則編、大和馬見町史、馬見町、1955年、p520
写真:奥 起久子撮影(2024/7/13)
情報提供:布施弘一氏(専明寺住職)