丹生川上流、赤滝五條線の道端の小さな祠に、乳の霊験あらたかという4体の地蔵が祀られている。以前は法谷寺(下市町谷409)から400mほど急な山道を登っていった谷川の合流点にあったが、平成になってお参りの便を考え寺から300mほど丹生川を上流にいったところの道路脇に移された。地蔵の祠は2つあるが、向かって右(上流)が乳地蔵。
祈願にはよだれ掛けを吊るし、手ふきに住所、氏名を記入、焼きもち等甘い物をお供えするとされていた。必ず乳が出るといわれていて、多くの人が訪れ、遠く大阪、京都からも参拝者があり、若い夫婦連れの姿もよく見かけたこと、奉納されたよだれ掛けや手ぬぐいで周囲がいっぱいになってしまうため、定期的に集めて処分をしていたという話が『大和下市史』にある。
乳を止める際にもお参りして、その際涎掛けに住所、氏名を記入して奉納する、昭和30年(1955)頃までは盛んに行われていたという情報が地元のコミュニケーション誌「老楽」にあり、これは乳預けを兼ねてのお礼の参拝のようである。
以前あった場所には小さいお社が残されており、途中の橋には乳地蔵参拝橋補修工事、平成17年(2005)と書かれた説明板が立っている。なぜこのような奥まった場所に地蔵堂があったのかであるが、以前はまだこの奥(上流)に民家が結構あって、この場所は道の合流点だったという。移動後は、移された側に元々あった別の3体のお地蔵さまと一緒に7月24日にはお祭りをしているとのこと(2024年1月取材)。
下市町史編集委員会:大和下市史 続編、下市町教育委員会、1973年、p724、p868〜869
https://dl.ndl.go.jp/pid/9573627/1/384 https://dl.ndl.go.jp/pid/9573627/1/456
下市町老人会文化部:老楽第36号、2005年9月発行、p10
奈良県薬剤師会公式サイト「授乳に関する社寺」
http://www.narayaku.or.jp/narayaku/nara_info_tem13.html
写真:奥 起久子撮影(2024/1/17)
資料提供:下市町教育委員会