古座川町峯集落は人里離れた山の中にあって、平家の落人が隠れ住んだと伝わる集落。ここにある薬師堂の左手に3体の石仏があり「安産とお乳の神さん」としてお参りされていたという話が『古座川町史』にある。
どれが安産の神さまで、どれがお乳の神さまなのかということは伝わっていないそうだ。向かって一番左の風化が少ない石仏には文政12年(1829)と彫られた字が見えるが、ほかの2体はより風化が激しい。
薬師堂は平 維盛(たいらのこれもり)の嫡子である六代(ろくだい)が建てたとされる。平家の落人が担いでここまで逃れてきたという薬師如来の入った厨子が祀られている。お堂の方の薬師如来に祈願の伝承があったかどうかについては、情報がない。
年に1回1月12日に開帳され、ここを離れた元住民の方が集まるそうだ。過疎化により集落の人口は3名に減っているという。
薬師堂のすぐ下には、サクラとしては2018年に100年ぶりの野生新種として発表されて注目を集めたクマノザクラがあり、ソメイヨシノよりも早く開花する。
古座川町史編纂委員会:古座川町史 民俗編、古座川町、2010年、p257
写真:奥 起久子撮影(2025/3/8)