みなべ町の住宅街の真ん中にある。現地の由緒書きによると、丹河(たんが)地蔵堂は昔から子安地蔵、延命地蔵として霊験あらたか。三鍋王子社前を通る熊野街道に面して祀られており、参詣者も多く「丹川のお地蔵さん」として住民の信仰を集めていた、とある。
境内のイチョウは樹高20.5m*、目通り幹周4.3m*、樹齢300年以上*で、県指定天然記念物。『日本産育習俗資料集成』に乳の祈願の場所としてリストアップされ、「日高郡では南部町の丹河地蔵堂のイチョウのチチをもらってきて(煎じて)飲むものが多い」とある。チチは上の方に小さいものがいくつか見られるのみである。
天然記念物指定にもかかわらず、定期的に強剪定されるとのことで、イチョウには窮屈な環境のようである。
みなべ町教育委員会からは乳の祈願についての情報はないとの情報だったが(2023年1月)、近くにお住まいの女性(76歳)の話によると、義母からこのイチョウに乳の祈願が行われていたという話を聞いているとのことであった(2024年10月取材)。
*1991年環境庁データベースによる
恩賜財団母子愛育会編:日本産育習俗資料集成、第一法規出版、1975、p356
写真:奥 起久子撮影(2024/10/10)