印南町の郊外に「乳の地蔵さん」という石地蔵が祀られている小さい祠がある。乳の悩みを持つ人にご利益があるという情報が印南町・印南町観光協会発行のパンフレットに記載されている。真下に切目川が流れ、山里の風が心地よく、近くに安産の神様の鳥居が見え、ともに子育てを守る里神として里人に親しまれているとある。
入り口には「乳の地蔵」という木の看板があり、祠の周囲には石造物や嘉永7年(1854)と彫られた石灯籠が立っている。
注目したいのは奉納物で、穴のあいた石が何十個も祠内に残っている。このような石は耳石(みみいし)と呼ばれて耳の祈願に奉納されたといわれるものだが、ここは耳の祈願については伝わっていない場所である。なるほど、乳も出るために穴は必要であるが(現地にはなんと2つ並んで穴があいた石もある)、もし乳の祈願で奉納されたとすると大変珍しい情報である。乳と耳の祈願は一緒に行われることがあるので、情報は残っていないが行われていた可能性は否定できないが。
由来などの詳細は不明で、50mほど離れた場所にある「玉の権現」が安産の神さまとして古くからお参りされているので、そこから派生してきたものではないかと伝えられているそうだ。
印南町公式サイト「紀州日高路印南ふるさとお詣りコース・パンフレット」 https://www.town.wakayama-inami.lg.jp/cmsfiles/contents/0000000/396/omairiver2.pdf
写真:印南町役場提供、奥 起久子撮影(2024/10/10)