日高川の土手のそば、県道185号線に面してイチョウの巨木と小さなお堂がある。お堂の中に祀られているのは小さな薬師如来木像で、乳がはりすぎた時には湯呑に入れてあずけると『御坊市史』にある。以前は耳石、涎掛け、しゃもじなどが奉納されていたという。
ここを管理している近くにお住まいの年配の女性によると、そばのイチョウにもチチの祈願がされていたとのことで、義母にあたる人から乳はイチョウの木の根本にかけて預けるもので、他に捨てないようにいわれていたという。
株立のイチョウで、空洞になっていたイチョウの本幹は2004年の台風で倒れてしまったとのことだが、残った数本の幹だけでも幹周4〜5mはありそうな大きさで、チチがあちこちに見られる。
むかしこの場所は日高川の船着場で、船を待つ人のための店が出ていて出店と呼ばれていたという。熊野街道が近くを通っており、お堂は街道のそばにあったがイチョウの場所に移動したとのこと。
管理している方のところには、寄付を募ってお堂を改修したり毎年の祭礼を続けてきたりした大正時代以降の記録が残っており、最近のお堂改修は2005年である。
御坊市史編さん委員会:御坊市史 第2巻通史編Ⅱ、御坊市、1981年、p1133 https://dl.ndl.go.jp/pid/9574811/1/590
写真:奥 起久子撮影(2025/2/19)
情報提供:御坊市教育委員会