熊本駅の近くにある標高133mの花岡山、その中腹にある湧水で、熊本水遺産に登録されている。量はさほど多くないが、崖の上の方から絶えず湧水が滴り落ちていて、下段に貯留している。
大正時代の『肥後国誌』に、「古祇園 祇園平にあり 祇園社の旧跡なり 僅かの清水湧出す 里俗嬰児の乳味乏しきに 此水乳母に飲ましめ 賽に禮(れい:甘酒のこと)を供し其の応ありと云」とある。この水を飲むと乳の出にご利益があり、お礼に甘酒をお供えしたということである。『新熊本市史』には水を飲むと乳が出たと、『平成肥後国誌』と熊本市公式サイトには、水で甘酒を作って飲むと乳が出たと紹介されている。
花岡山はむかし祇園山といわれ、この場所は古祇園・祇園平と言われた場所で、現在春日1丁目にある北岡神社の前身 祇園社があったとされる場所という。
乳水が出ている斜面は山頂の花岡山公園への道路の脇にあり、車で側まで行けるが、市民のハイキングコースにもなっていて、道路脇に「乳水」と書かれた標柱が立ってわかるようになっている。
新熊本市史編纂委員会:新熊本市史別編第2巻(民俗・文化財)、熊本市、1996年、p411 https://dl.ndl.go.jp/pid/12694900/1/246
高田泰史:平成肥後国史 上巻、平成肥後国誌刊行会、1998年、p117
熊本市役所環境局公式サイト https://www.city.kumamoto.jp/kankyo/hpkiji/pub/detail.aspx?c_id=5&id=20622&pg=1
サイト「コトバンク」 https://kotobank.jp/word/乳水-1991197
写真:奥 起久子撮影(2022/5/3)
資料提供:熊本市歴史資料室